その1: 修理編  Part1

■修理車両・・・’73年.240ZG  L24 Gノーズ仕様 (実作業:93年3月初め〜7月納車)
 
■作業内容・・・オリジナルカラーは、マルーン色。この時は、ホワイトに塗装替えの状態。
          レストアとして入庫した。損傷は無いようだが、かなりの鈑金など交換の
         必要がある部品が多く存在している。取りあえず分解脱着してみましょう

         当時のスティールカメラからのプリントを、スキャンしました。
                                                     (記載・平成21年4月)


(1) 残念ながら、入庫当時のオリジナル状態写真が有りませんでした。
   前側からの状態が良く判る写真です。 ボンネットと左右のフェンダーやライトハウスを外した写真で、
   錆の浸食から来る痛み具合が認識出来ます。(3月7日の撮影)   

   オリジナルの色は、マルーンですが車体の色が白く塗り替えられているのが、判りますね。
   この状態で、前側のラジエター・コアサポートは交換を決定しました。 入手出来ました。
  


(2) 状態は見てのとうり、隠れている部分は、ことごとく交換を必要とする。 腐食の進行は重傷です。
  エンジンを降ろす前に、ラジエターコアサポートは、切り離しました。(3月9日の撮影)

  この当時の写真を見るところ、エンジンとミッションをAssyの状態で、前側から抜き出し、脱着したようだ。
  取りあえず、この240ZGには純正のカークーラーが付いていますね。
  ちょっと今とは分解の手順が違いますが、目的は同じです。 使用しているマテリアルはやや異なりますが。
 

(3) 腐敗では有りませんが、腐食の進んだフレーム部分やフェンダー前部(フードレッジと呼ぶ)は、切断して削除します。
   画像では、前部左側のフードレッジ先端部を、下側のサイドメンバーの一部と共に切断・切開しています。
   切開・切断した不要な鉄板は、再生する原型の型として、亜鉛メッキを施したボンデ板を(0.8mm)使用して鈑金する。

  ここに細部の画像がありませんが、こうした接合面の溶接は、切断面どおしを平滑接合しています。接合には薄物
  溶接作業をしますが、5cm間隔位をガス溶接したら、当て板(通称カマボコ)と鈑金ハンマーで叩きます。 これは
  鍛えと言って、溶接面の強度を高める作業です。鉄は熱いうちに叩き、鍛えます。

  見えない所へ職人の技と技術が施されています。部分によっては、ヘミングと言う加工を施し、強度を増しで作業を
  している部分も有ります。袋状になっている部分などがこうした作業の対象となります。(角フレームなど)


   白っぽく写っているのは、錆に強いボンデ板です。鈑金・加工を重ねて、何度も仮合わせなどの行程も行いながら、
   上記の画像となります。 サイドメンバー側の鉄板は、1mm厚のボンデ板で、加工や凹凸などの難しい手仕上げを
  
職人芸だけでは、作り込み出来ない、重労働作業をしています。(3月10日の撮影)


(4) 同じく、右側も同様な行程や素材を施しました。
  画像から見とれる加工の様子は、2重に重なる部分も有りますが、ここからの詳細な作業画像が無いのが残念です。
  ここからは、部分を仮付けします。 ガス溶接作業で、薄物鉄板の溶接作業は、高度の熟練工の技能作業です。
  この数年後、前側を大破しますが、しっかりとした溶接による強度も確保していた様相が良く判ります。
  
  画像の右下の日付で判るように、この職を担当した高度の成熟した熟練工は、通常の日程の1/3位で仕事を完成
  に近づけていました。驚くべき、技量とパワーを持ち合わせた熟練工です。 (3月9〜10日の撮影)

(5) S30系の泣き所であり、ここを重点に検証するのが良い中古車の選び方とも言えるヶ所です。
  ここの交換パネルは、カナダ製の当社でも販売している補修パネルです。この製品も耐腐食性のボンデ板を使用
  しています。 左側の2枚の写真は、3月10日に撮影しています。画像には有りませんが、腐食部分は切断削除
  してから、補修パネルを溶接しています。決して、被せて修理している事は有りません。
  
  写真画像の右側は、黒く写っている部分が有りますが、これは新品パーツを使った、画像となります。
  つまり、ドアーはAssyで交換しています。また、サイドシェルメンバーも交換しています。もう現在は、絶版のパーツです。
  ちなみに、画像の左側写真は、3月23日となっています。
  しかし、ここで驚くべき画像が存在します。この約2週間の作業工程では、同時に右側のサイドシェルメンバーも交換して

  いました。 下記で紹介いたします。(3月10〜23日の撮影)


(6)  右側です。サイドシェルの交換作業が良く判りますね。
  左上の画像は、腐食したサイドシェルを外した状態で、下に外したシェル部分が落ちています。茶色の部分は腐食・錆です。

  作業者が持っている黒いパーツは、純正パーツ(現在は製廃)のサイドシェルです。左右共に交換しました。
  筆で塗っているのは、接合の腐食止めでスポlット溶接が出来る通電シーラーです。部分の仮付けはガス溶接をしています。
  リアーフェンダーの下部は、補修用の部分パネルを左右共に使用しています。
  
  こうした作業には、スポット溶接・MIG溶接・それにガス溶接を複合して使い分けいたします。
  通常、ガス溶接は高度な熟練作業経験が必要です。
  仕上げてしまうと、当たり前のように治っていますが、熟練工の巧みな技後世の寿命に影響を及ぼします。
  (3月10〜23日の撮影)

 

(7) 実はこの時、同時に床下の交換(全面)作業も同時進行していました。驚異の作業スピードです。

  画像の上左側は、入庫当時の状態で部分補修した痕跡はありましたが、腐食は進行していました。(床の裏側です。)
  中央上の画像は、室内のカーペットなど剥がした状態ですが、全面交換の必要と判断しました。

  右側上の画像は、白い色をしています。これは、腐食した床を全面切断して切除した後に、床のプレスや形状を
  真似て作った新しい床です。 この床が白いのは、当時トヨタのマークUの不良ボンネットを利用して、表面の部分
  を剥離してから、鈑金・加工をして再利用しました。 部分溶接にて仮付けをしていますが、その後全面をガス溶接
  しています。貴重な画像ですが、今は詳細が有りません。 別の機会で紹介いたします。(画像有り)


(8) 重要な前側フレームの修正・鈑金に入ります。 
  画像は、左側のフードレッジと呼ばれる部分で、下側の内側のメンバーフレーム(腐食が酷く、画像では切除した後)
  が無い状態です。 撮影はエンジンルームの内側から撮っています。  
  
  左側のフードレッジと呼ばれる部分は、大型の一体パーツですが、その下側部分のみ腐食していました。 

  そのため、その腐食部分だけ切断・削除して新しい鋼板を貼り付けます。 こうした部分は、1枚の鉄板だけだは無く
  数枚の鉄板が重なって構成されている場合が多く存在します。

  中央の画像で作業者がガス溶接をしている様子が判りますね。サイドメンバーのフレームは、黒く写っています。
  新品のサイドメンバーは、左右共に今回は交換しました。 エンジンと前の足回りを支える重要な部分で、複雑な
  構成をしています。 最後に新品のラジエターコアサポートと前の第一メンバーを交換・接合しています。


(9) ここで作業は、実は先に車体塗装の全面剥離をしていました。 順番は替わりますが古い鈑金跡など再修理
  をしています。その後、車体へはサフェーサーを塗装しました。
  

(10) 先のページで修正したフードレッジ部にアンダーコートを塗布しました。これは独製の(グラスリッド社)水性コート
  ですが、当時は最新の純正に近いコート表面を再現してくれました。 現在は3M製のウレタン材を採用しています。
  
  ここに今回の鈑金作業者が、腐食して使用が不可能だったガソリン給油口のフタを、鈑金で作ってくれました。
  これも廃材の再利用で作りました。 良く出来ているでしょう。